加速度センシングによる子牛の健康異常の早期発見に向けた取り組み
取り組みテーマ分野:<スマート農業>
研究者:宮城 茂幸(工学部・電子システム工学科)
滋賀県の「近江牛」は三大和牛のひとつとして古くから全国的に知られ、ブランド化に成功していると言えます。一方で高齢化に伴う畜産業従事者の減少という問題がありますが、牛肉の需要は変わらないため、畜産農家一戸あたりの飼育頭数は増加するという傾向にあります。子牛を繁殖、育成することは時間も手間もかかり難しいということで、滋賀県畜産技術振興センターでは子牛を飼養し、畜産農家に供給するという子牛の育成事業を行っています。子牛を効率よく育てるには多頭飼育にならざるを得ません。しかしその場合、子牛の疾病を見逃してしまい、損失につながるということが起こります。疾病監視には哺乳量の計測や体温のモニタリングなどが考えられますが、一時的な哺乳量の減少だけでは必ずしも健康異常とは限りません。また正確な体温を得るためには直腸温を測定しますが、個体を確保する必要があり、特に多頭飼育では現実的ではありません。
そこで以前から人の動作の検出などに用いていた加速度センサを利用して、子牛の運動量を計測するという着想を得ました。加速度センサを子牛に装着し連続的に加速度時系列データを採取してみるというところから始め、データサンプリングの程度や解析するためのしきい値の設定方法など、解析手法のノウハウの蓄積を重ねました。装着方法によっては有効なデータ採取が難しいだけでなく、センサを壊されてしまうというような問題も生じました。データを24時間ごとに分割し、時刻ごとの静止と非静止の状態の識別をし、加速度がある閾値を超えた時間を積算して頻度分布グラフを作成、健康個体と発熱個体の違いを示す特徴量を見出そうとする試みを続け、使えそうな手法を見出すことに成功しました。統計的な手法を用いて、精度の高い判定が可能になったと言えます。
センサやデータ送信のための電源の長時間稼動化やデータ通信の安定化、個体差のある子牛をいかに精度よく判定するかなど、課題も多く残されていますが、データの蓄積を進めてさらに精度によい解析手法を検討していく方針です。
本研究は畜産業の効率化や省力化、コストダウンに寄与して近江牛というブランドを守るためだけでなく、対象とする子牛の健康を維持するためのものでもあり、アニマルウェルフェアの考え方にも通じています。
