機械・構造物の損傷を常時監視するための自励駆動型超音波振動を用いたモニタリング技術

取り組みテーマ分野:<スマートファクトリー>

研究者:田中 昂(工学部・機械システム工学科)

 工場の製造設備、橋・道路・水道網などインフラ構造物は、長年使い続けることで劣化・老朽化が進みます。時間の経過とともに、疲労き裂、締結部のボルト緩み、塩害による腐食などの様々な異常が発生し、重大事故が発生するリスクが増えてきます。稼働停止による経済的損害を回避するためには、問題が生じた後に対処する(事後保全)だけでなく、問題が発生する前に不具合を発見する(予防保全)ことや、常時監視し異常発生を予見して対応する(予知保全)ことも必要です。振動工学の観点を中心に、機械・構造物のモニタリングのための異常検出技術の開発に取り組んでいます。
 基礎研究として、超音波帯域の固有振動を用いた異常検出技術を開発しています。固有振動は形状や材質で決まる対象物固有の振動です。損傷のある対象物の固有振動を計測すると、損傷がない場合に比べて周波数が低下、振幅が減少します。この変化を検出することで図面などの構造物情報が無くても異常検出が異常の有無の判断が可能です。従来の固有振動計測による異常検出では、機械・構造物使用時に発生する振動計測を行っていました。現在研究が進む予知保全ではより小さな異常を早期に検出する必要があります。微小な内部異常を高感度に検出できる超音波による異常検出技術と固有振動計測による異常検出技術の融合を目指しています。
 本研究では、振動が減衰しないよう適切なタイミングで外力を加える制御を行うことで超音波固有振動を励起する自励駆動法を開発し、異常の常時監視、モニタリングへの応用を行いました。その他にも、異常の初期に発生する接触型異常の技術として、低周波振動と超音波を利用する非線形波動変調現象や超音波を2波入力して低周波を生じさせる周波数ダウンコンバージョン現象を利用した検出手法などを研究しています。
超音波による異常検出技術を8月に開催されたイノベーションジャパン2023にも出展し、様々な企業から引合いをいただいています。それらの企業の方々からは具体的な製品の検査工程における課題をご提供いただいており、工場の製造設備のモニタリング、製造した部品の検査など、様々な応用分野で実用化を進めてまいります。

 


2023年03月31日