研究活動報告

ネットワーク解析による観光地の人出(入込客数)推定

研究者:酒井 道(工学部電子システム工学科)、宮城 茂幸(工学部電子システム工学科) 他 学生2名

複雑な構造を分析するために、ネットワーク解析を適用し、構造全体の性質と構成要素の個々の役割を調べています。以下では、建物内の間取りの要素(部屋、廊下、階段など)をネットワーク(“グラフ”と言います)で表現する例を示します。構成要素(“頂点”で表現されます)の間のつながり方から、各構成要素の果たしている重要性を数値(中心性指標)で“見える化”することが可能です。

図1のような建物群を分析すると、例えばエレベータ前のホール部や、玄関前の十字路の数値(媒介中心性、図2)が高くなります。このようにネットワーク構造から求められる理論値と、実際の通行人数のカウント数を比較すると、それらの間に相関があることがわかってきました。今後は、観光地における人出(入込客数)の推定などの社会実験でその有効性を確認していきます。

図1.解析および通行人数カウント実験を行った建物の間取り(滋賀県立大学の工学部棟、3階建て)。

図2.図1の詳細構造内の要素の重要性の数値(中心性指標値:媒介中心性)。点Aと点Bは、図1に示したもの。

















2017年04月01日

社会実践に向けたテキスト分析のための統合環境

研究者:砂山 渡(工学部電子システム工学科)

 テキスト分析のためのさまざまなツールを統一的に扱うための環境TETDM(http://tetdm.jp)(図1)の構築を行っています。本環境にはテキスト分析のための40種類以上のツールと、30種類以上の可視化のためのツールが備えられています。これら既存のツールと、目的に応じて新規に追加されるツールとを組み合わせて用いることで、農業,看護,観光を初めとする多様な目的に対応できるデータ分析環境を構築しています。
 データとしては、ニュース記事、アンケートデータ、日誌や日報などのデータ、掲示板やSNS等のコメント集合、など電子的に集められるテキストは全て分析対象となります。現在は、Rによるデータマイニングと組み合わせた分析や、ディープラーニングによる学習結果を用いた文章分析、など,実用的な分析環境とするための改良を行いながら、地域との連携可能性を探っています。
 人間とコンピュータの知的な協働作業によって、コンピュータによる結果の提示にとどまるのではなく、人間の意思決定における具体的なアイデア生成までを全体の枠組みとして捉え、その一連の手順を支援する環境とするべく研究を進めています。

図1. テキストマイニングのための統合環境TETDM(図は浦島太郎のテキストの中で,浦島,亀,リュウグウ,乙姫などの主題に関連する単語の出現状況を可視化している)

2017年04月14日

嚥下機能評価システムの構築に向けての取り組み

研究者:宮城茂幸(工学部電子システム工学科)、 小澤恵子(人間文化学部生活栄養学科)、 森谷季吉(草津総合病院)、 坂本眞一(工学部電子システム工学科) 、酒井道(工学部電子システム工学科) 他 学生4名

 

 我が国は超高齢社会に突入し、現在では国民の4人に1人以上が高齢者であるといわれています。このような高齢者の増加に伴って、嚥下障害も問題化しています。嚥下障害による「誤嚥」は肺炎を招く要因の一つです。厚生労働省の平成27年人口動態統計月報年計(概数)によると、肺炎は、悪性新生物、心疾患に次いで全死因の第3位です。肺炎の中でも高齢者に多いのは「誤嚥性肺炎」であり、高齢者肺炎のおよそ 70%以上が誤嚥性肺炎であるとも言われています。
 医療機関では、嚥下機能を評価するために嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)が用いられますが、特別な機器や操作技術が必要ですので、在宅での評価は不可能です。今後グループホームや在宅による介護が増加するにしたがい、別な技術がいらず、一般の看護従事者や介護従事者であっても実施できる簡便で統一された嚥下機能評価システムが必要とされています。そこで、従来の頸部聴診法を援用した嚥下音の解析と頸部深度画像を組み合わせた嚥下機能評価システムの構築を目指した基礎研究を行っています。
 現在、草津総合病院頭頸部外科・甲状腺外科センター長森谷季吉医師と同院NST嚥下チーム協力のもと、嚥下音の取得や嚥下時の頸部の動きを捉えるための深度画像撮影を行っています。これらのデータをもとにして、健常者と嚥下障がい者との嚥下音の特徴差を調べたり、深度画像から頸部甲状軟骨の動きを推定する方法を検討しています。
 嚥下音の解析は、時系列信号解析と呼ばれる解析手法の応用とみなすことができます。時系列信号解析では、音(音声)だけでなく、加速度センサや角速度センサといった種々のセンサ信号も取り扱い、それらの信号から有用な情報の抽出を行います。これにより行動認識といった分野への応用も可能です。また、深度画像については、物体の追跡、形状推定といった問題へ適用できます。このようにここでの研究結果は、嚥下機能評価にとどまらず様々な分野へ応用可能です。

図1.健常者の嚥下音の例
食塊流入からVE画像がホワイトアウトするまでを赤色で、 ホワイトアウトから呼気再開までを青色でプロットしています。 食塊の流入にともない嚥下がすぐさま開始され、 バースト状に嚥下音が発生することがわかります

図2.深度画像から導出した勾配画像
形状変化にともなう傾きがグレースケールで表現されています。甲状軟骨にともなう隆起部分が顕著に現れています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年04月20日

テキスト分析によるデータサイエンスとその応用

取り組みテーマ分野:<スマート農業・看護・観光・ファクトリー>

研究者:砂山 渡(工学部・電子システム工学科 )

 データ分析とその応用全般に関しては、本センターのスマート化に関わる根幹をなす部分といえます。その中でも、テキストデータは、数値データよりも分析に必要とされる手法がより複雑で困難となることが多いとされています。
 本研究では、そのようなテキストデータの分析について、砂山渡教授が長年開発してきたテキスト分析ツール・TETDM(https://tetdm.jp、フリーソフトウェアとして無料入手・活用可能)をベースとして、説明されています。下図に示すような手順は、すべてのデータ分析において行われるものであり、数値データの場合には種々の人工知能系のツールが充実し、自由に利用可能となっています。しかし、テキストの場合は、まずその中の情報を分類・整理して「分析」「可視化」する部分について、これまでは文章の読み手の主観に頼っているきらいがありました。本研究では、その部分も自動化しつつ、「結果の収集」「解釈の集合」の部分についても手順化し、人間が知識を得て意思決定することを可能としています。実例として、アンケート結果の分析について、TETDMによる操作例も示されています。
 なお、TETDMに関する解説書籍を砂山教授自身が出版しており、そちらもご参照下さい(砂山渡、「フリーソフトTETDMで学ぶデータ分析」(コロナ社、2020年))。

▲テキスト分析ツール:TEDDM


▲データ分析による意思決定手順。本研究では、特にテキスト情報の場合の分析手順を説明している。


2022年03月31日

工学部と連携して行うICT教育システムを活用した看護技術の効果的な教育方法の検討

取り組みテーマ分野:<スマート看護>

研究者:関 恵子(人間看護学部・人間看護学科)

 看護あるいはその関連分野の内容が変化・多様化する中で、ケアリングの重要性が増したり専門化したりする傾向があります。従って、それが関係する看護教育においても、手技教育が要素として含まれますが、実技実習に関してはいわゆる「勘」と「コツ」に頼ってきた部分がほとんどと言えます。とりわけ、新型コロナウイルス流行に伴い、対面での演習が不可能となったため、学生の習熟度アップに対して非常に困難な状況が生まれました。
 本研究では、「勘」と「コツ」を中心とし、実際の手技において見よう見まねで実施されてきた手技教育について、ロボット工学の手法を導入して、ファントム素材とその中の圧力センサによるデータ可視化を実現したものです。ファントム素材としては、本研究ではソフトアクチュエータ(空気圧ソフトデバイス)を用い、その中に圧力センサを内蔵することで、実技者の作業により生じた位置・力・速度情報を可視化しました。そして、熟練者のデータと実習生のデータを数値として比較することで、実習生は熟練者の値に近づくように習熟度を高めていくことが可能です。この手法については、実際に使用した実習生に対して行ったアンケート結果からも、その有効性が確認できました。
本研究は、工学部・機械システム工学科の西岡靖貴講師と共同で行われました。

▼「柔らかセンサ」を活用する手技療法教育システム

 

 

 

 


2022年03月31日

持続可能な農作物生産・畜産のための工学的手法によるアプローチ

取り組みテーマ分野:<スマート農業>

研究者:秋山 毅(工学部・材料化学科)

 農業の現場においてICT化を実施する取り組みについて、最近多くの報告がある中で、本研究では農業の実施によって発生する温室効果ガスの低減や、畜産の省力化を目指し、望む場所でICT化を行うための電源構成に着目した実装に取り組んでいます。
 本センターで取り組んでいる看護や工場の現場とは異なり、農業の現場ではICT化を進めるにあたって、電線敷設が十分でないことも多く、電源の確保が別途必要です。そこで本研究では、農地内の耕作未利用地を活用した発電・蓄電による電源構築によって、ICT機器への電源供給のみならず、農業の電化による温室効果ガスの発生量低減を目指した検討を行っています。具体的には、実際の棚田の法面に太陽電池モジュールを設置し、発電から蓄電池への蓄電・直交流変換も含めたシステムを構築し、太陽光発電と電力利用を含む実証実験を行いました。一方、畜産への応用については、子牛の行動モニタリングのための位置センサーと加速度センサーを常時駆動するための電源の適切な選択と組み込み、将来のより長期間のモニタリングに対応できる発電+蓄電系からなるユビキタス電源の設計を行いました。子牛の行動モニタリングに関する成果については、前述の通りです。
 以上の研究について、棚田における農業のエネルギー自立については、伊吹くらしのやくそう倶楽部様の平成31年度と令和2年度の滋賀県地域エネルギー活動支援事業補助金による活動成果に基づくものであり、畜産における子牛のモニタリングについては、㈱フォーカスシステムズ様、滋賀県畜産技術研究センター様、工学部・電子システム工学科の宮城茂幸准教授と共同し、令和3年度滋賀県近未来技術等社会実装推進事業補助金の支援のもとで行われました。

 

▲農業・畜産業の持続可能性を高める、発電・蓄電システムとセンサシステム。

2022年03月31日

ロボットアーム・ロボットハンドの研究と作業の省力化

取り組みテーマ分野:<スマートファクトリー>

研究者:山野 光裕(工学部・機械システム工学科)

 従来から開発され工場現場(FA: ファクトリーオートメーション)でも適用されてきたロボット技術について、最近注目されているソフト・ロボティクスについて研究開発を進め、本年度までの数年間で、形状記憶ゲルを用いて形状が調整可能な多指ロボットハンドや多関節を少数のモータで駆動するロボット指等、新しい動作原理で働くロボットのを生みだしており、種々の現場の状況に対応可能なロボット技術に発展させることを目指しています。
 指を粘土細工のように変形させて利用するロボットハンドと多数の関節を少数のモータでまとめて駆動するロボットハンドの開発を進めています。

 現状では、ペットボトル状等の物体の把持実験で原理の確認ができており、今後、より複雑な形状に対しても適用可能なロボットへと発展させていく予定です。工業用途のみならず、将来的には農業における収穫ロボット等への応用も期待されます。
 

▲ロボットアーム・ロボットハンドの研究と作業の省力化。形状記憶ゲルを活用している。
(写真は2018年3月に学会発表し、2021年3月の滋賀県立大学地域ひと・モノ・未来情報研究センター第4回成果発表シンポジウムで紹介したもの)


2021年03月31日

個々の現場で使える深層学習開発のためのユーザ支援ツール

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取り組みテーマ分野:<スマート農業・スマート看護>

研究者:榎本 洸一郎(工学部・電子システム工学科)

 現場で種々の対象物の形状を“ハカル”(形状・サイズ把握)ことが必要になりますが、本研究ではその課題解決のために、対象物の画像データを用いて、容易に“測る”・“計る”を実現し、形状やサイズを定量化し、さらに深層学習用ツールとすることに取り組んでいます。
 本研究においては、専用アプリケーションを開発し、読み込んだデータ画像内にある対象物をマウス等で“タッチ”(簡単になぞる)だけで測定が可能です。より具体的には、画像内にある対象物部とその背景を区別したり、複数対象物がある場合にそれらの境界を自動認識する技術を実現しています。そして、通常の“なぞる”作業をさらに自動化するために、画像セグメンテーション等の分析を可能にしました。具体的には、元画像としては24枚のみを用意し、それを専用アプリケーションでデータ自動抽出し、そのデータについて画像部分のラベル付けや水増し作業を経て11万個のデータとし、それを深層学習(正解付きのデータの作成と訓練・テストにより、自動分析可能にする)の学習データとして活用可能となりました。
 この検討は、具体的には化粧品等の効果確認等のための角質細胞の顕微画像分析に応用されており、肌の状態診断に活用可能です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲個々の現場で使える深層学習開発のためのユーザ支援ツール。

 


2021年03月31日

工場内可視化促進へ -真空装置内で動作可能なIoTセンサの開発-

取り組みテーマ分野:<スマートファクトリー>

研究者:酒井 道(工学部・電子システム工学科)

 工場内のクリーンルームの生産ラインには、薄膜等の形成・微細加工を実現するために真空装置が用いられることが多くあります。特に、現在不足状態となっている半導体製造工程においては、その心臓部にあたる機能を果たしています。しかし、これまでは、その内部状態(薄膜形成や加工がどこまで進んだか、等の検出)は、装置外から観測したごく限られた量の情報により判断せざるをえませんでした。そこで、我々は、真空状態で動作可能なセンサの開発に取り組んでいます。
 真空装置内でセンサを動作させることは、これまでほとんど例がありませんが、それはまず真空状態で動作する電子回路部品が、宇宙用途など限られた場合を除き、その目的専用で開発されていないことにあります。今回、我々は、すでに入手可能な電子部品の中から使用可能なものを事前試験で抽出しました。このセンサデバイスをいったん組み上げると、そこに無線通信デバイスを含んでいることで、真空-大気間の有線での情報伝送が不要となり、大きなメリットが生まれます。われわれは、大気圧の1000分の1程度の圧力で動作可能な色彩センサを開発し、同時に真空装置内でよく生成・活用されるプラズマ発光を検出・定量化することに成功しました。センサ部分は、色情報出力デバイス(ディジタル信号出力)とプログラム可能なマイクロコントローラおよび無線通信デバイスによりなります。このマイコン部分は、自由にプログラミングが可能であるため、生データをその場で簡単に加工・処理することも可能です。
 本研究は、㈱魁半導体の皆様と共同で実施しています。

▲真空装置内で動作可能なIoTセンサの開発。

2021年03月31日

自然環境下における水産資源の可視化

取り組みテーマ分野:<スマート農業>

研究者:榎本 洸一郎(工学部・電子システム工学科)

 第一次産業のうち、水産業は、農業・林業と異なり、大半の対象物が水中にあり、対応可能なカメラの導入と対象物へのアクセスの困難性により、その見守りのハードルが高く、従来は実際の漁獲状況の分析にとどまっているところがほとんどでした。それに対して、本センターでは、漁獲する前の段階で、水産物資源の状態を可視化し、予測可能性を高めて漁業振興へ貢献することを目指しています。
 例えば、北海道の漁獲高に有為な割合を占めるホタテ貝についての資源量推定を行ってきました。様々な海底の状態(砂、礫等)に半ば埋もれる状態で生息している貝の存在の自動抽出においては、背景と対象物が混成した画像をどのように分析するか、という技術課題を解決する必要があります。そこで、深層学習手法を活用し、多くのデータの事前学習により、自動での画像識別を可能としました。
 滋賀県は琵琶湖という貴重かつボリュームも多様性も豊かな内水面を抱えており、その可視化や水産業の活性化への応用を検討しています。

▲水産業におけるスマート化手法例(海底の貝の検出)。


2020年03月31日

看護師を支援する生体計測とソフトアクチュエータ開発

取り組みテーマ分野:<スマート看護>

研究者:西岡靖貴(工学部・機械システム工学科)、伊丹君和(人間看護学部・人間看護学科)、千田美紀子(人間看護学部・人間看護学科)

看護師の看護現場での労働の種類は多岐にわたり、特にその中のいくつかの動作が原因となる腰痛による離職等の問題が深刻であり、このような課題の可視化とサポート機器開発を行っています。
 筋電位センサと姿勢センサにより、現場でのデータ抽出・蓄積を行いながら、ソフトアクチュエータ技術を基盤として、アクティブコルセットとアクティブソフトマットの研究開発を行っています。作業に応じてアクティブに形状が変わる状態そのものも、3Dスキャナによる形状測定を行い、現物を定量データ化するために、センサを活用することで、主観評価だけでない客観化を通した開発を行い、実際の作業における作業軽減効果(筋電位低下)も確認できました。
 本研究活動は、学外の民間企業様(2社)と協同しながら、本学内においては人間看護学部と工学部の間で分野横断的な検討として行いました。

▲看護師の作業支援のためのセンシング技術と柔軟対応型ハードウェア技術。

2019年03月31日

円筒マーカによるペン形状器具のリアルタイム動作検出

取り組みテーマ分野:<スマートファクトリー>

研究者:橋本 宣慶(工学部・機械システム工学科)

 早くは1960年代から、第2次産業の工場内において、多くの手作業が自動化されるFAの取組が進みました。しかし、究極的には伝統工芸品の作製における手作業を完全にコピーし自動化することが大変困難であることからもわかる通り、工場内作業としての手作業、すなわち「勘」「コツ」に関わる部分にはFA化が進まず、ほとんど手つかずの状態で残っている箇所があります。ベテラン技術者が続々と引退されていく中、社内でごく少数の技術者しか所持されていない技術の伝承は、待ったなしの課題と言えます。
 本研究においては、円筒形状の作業具について、独自のマーカーを開発し、その動画を撮影することで3次元的な位置のみならず角度・回転の情報も取得可能としました。この時間変化を捉えることで、動作状態およびその時間積分量を可視化・定量化することが可能です。また、同時に開発している仮想現実感(virtual reality (VR))・拡張現実感(augmented reality (AR))技術と合わせ、技術者の訓練機の実現や、訓練機作業時のデータ取得による技術レベル評価も可能となると期待できます。

▲作業具の3次元動作追跡を可能とするマーカー設計とVR・AR技術との融合。


2019年03月31日

簡単操作~無線通信機能付~ポータブルスマートチェッカー

取り組みテーマ分野:<スマート農業>

研究者:酒井 道(工学部・電子システム工学科)

 農業において、収穫時期の判定は、サンプリング調査等の手法によるものなど、部分的には診断法が確立してきているものの、大半の場合は農業従事者が長年の経験により判断しているのが実情です。農業従事者の減少・高齢化に伴い、収穫時期判断の自動化と自動収穫機器の開発が待望されています。しかし、高価なシステムの設備投資を農業現場で加速することは困難であり、いかに安価な技術導入を行うかが課題となっています。
 そこで、果実や野菜の収穫時に対象物の色が変化することに着目し、㈱チェッカーズが開発した色合いセンサの活用を共同で検討しています。この色合いセンサは、センサ部で赤・緑・青の三原色に対応する値を検出し、そのデータを無線通信によりパソコンやクラウドサーバに伝送できます。実際に測定を行ってみると、例えば図のようなリンゴの場合、もともと色むらがあるため、センサのデータ取得位置によりデータに大きなばらつきが生じることがわかりました。そこで、光学迷彩技術により空間平均値を得ることができ、色合いを評価可能となることがわかりました。今後は、実際の収穫現場での実証検討を行っていきます。
 本研究は、連携先である株式会社チェッカーズの登尾一幸様、田口貢士様、植野伸哉様と共同で行いました。

▲簡単操作~無線通信機能付~ポータブルスマートチェッカーの概略説明。

2018年03月31日